学科長のことば(送辞)
私たちの名城大学における学生生活は数年に過ぎないかもしれませんが、人生における存在は極めて大きいものがあります。諸先生方の親身のご指導や学友たちとの楽しかった学生生活の思い出は心のよりどころです。なかでも、卒業・修了学位記授与式は決して忘れることのできない人生のイベントということができます。そこで、当Webサイトでは学科長から賜った「卒業(修了)生に贈ることば」を掲載することとしました。
<令和6年 学位授与式>"卒業生に贈ることば"
環境創造工学科学科長
環境創造学専攻 専攻主任
日比 義彦 先生
卒業式あいさつ
本日晴れて名城大学理工学部環境創造工学科、並びに理工学研究科環境創造学専攻を卒業される皆さん、本当におめでとうございます。本年度70名の学部生が卒業し、3名の大学院生が修了となります.また、本年度は環境創造工学科として最初の卒業生となると同時に、環境創造学専攻として最後の修了生となります。さらに、2004年3月に環境創造学科1期生が卒業して20回目の卒業式となり、卒業生も1900人近くなりました。このことより、本年度は、当学科の前身の環境創造学科が平成12年4月に創設されて以来、1つの節目の年となりました。
卒業生および修了生の皆さんは、卒業および修了の喜びと4月からの新しい生活への期待で一杯かと思います。是非、4月からの新しい環境において、当学科または当専攻で学んだことを基礎として、仕事のノウハウを身に付け、さらに、資格取得などによるキャリアアップし、4月より所属する組織において欠くことができない人材になること期待しております。また、仕事のみではなく、私生活も充実した日々が過ごせるように仕事とのバランスを取り、長い社会人生活を豊かなものになることを祈念しております。それと、皆さんが就職する職場で、労働災害もなく心身ともに安全で数十年後のリタイアの時を無事に迎えて頂けたらと思います。また、職場において他の人の心身の安全についても配慮して社会人として生活するようにして頂けると大変良いかと思います。
ここに、無事、皆さんが新たな旅立ちを迎えることになったことへ心よりお慶び申し上げます。最後になってしまいましたが、皆様のこれからのますますのご健勝とご多幸を祈念いたしまして、私からのお祝いの挨拶とさせていただきます。
本日は本当におめでとうございます。
<令和3年 学位記授与式>"卒業生に贈ることば"
環境創造工学科学科長
環境創造学専攻 専攻主任
三宅 克英 先生
卒業式あいさつ
厳しい冬の寒さも和らぎ、生命の息吹が感じられる季節になりました。
本日晴れて名城大学理工学部環境創造学科、並びに理工学研究科環境創造学専攻を卒業される皆様、本当におめでとうございます。昨年度はコロナの影響により、この式を断念せざるを得ませんでしたが、今年はこのような限定的な形ではありますが、開催できることを嬉しく思います。
平成12年4月に創設された当学科は、令和2年度で21年目に入りました。令和2年度は、92名の学部生が卒業、5名の大学院生が修了となります。
環境の分野において世界に目を向けますと、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第40回総会(2014年10月、於 デンマーク・コペンハーゲン)において、IPCC第5次評価統合報告書本体が採択されました。現在、2022年の第6次報告書も準備されているそうです。
このなかで、人間活動が及ぼす温暖化への影響についての評価が行われていますが、1990年公表の第1次報告書では人間の活動が「気温上昇を生じさせるだろう」であったのものが、「可能性が極めて高い」(95%以上)、すなわち、温暖化には疑う余地がない、20世紀なかば以降の温暖化の主な原因は人間の影響の可能性が極めて高いと評価されています。言い換えれば、私たちの活動そのものが環境に直接的に影響を及ぼすことが明確になったため、環境問題に対し、いかに真摯に取り組むかによって温暖化への対策を講じることが重要になると考えられます。トランプアメリカ前大統領などはこれに否定的でしたが、これが真実であるか如何に関わらず、我々工学系の人間が行うべきことは、技術革新のイノベーションによる対策への貢献となるでしょう。管(すが)総理の提唱する「2050年に炭素ゼロ」という政策もこのイノベーションあってのものと理解するべきだと思います。
全国の理工系学部の中で、唯一無二の環境創造学科は、これらの問題に立ち向かい、解決をめざす学科です。卒業後は、環境関連分野をはじめ様々な分野で、環境技術の専門家として活躍してくれることを期待しています。実際に、このコロナ下にも関わらず、在学中、多くの学会発表、学術論文発表など、環境をキーワードに多方面で実績を残していただきました。当学科は本年度から環境創造学工学科への改組を開始しており、さらなる環境技術イノベーションへの取組をめざして、進んで参ります。
皆さんにおかれましては、大学や大学院で学んだ考え方、知識を土台に、資格取得などの基礎力向上、また、実務を通じて応用力を身に着けて、さらにキャリアを積んで持続可能な成長を続けていってください。なお、ご父母の皆様におかれましては、本年度卒業・修了する学生諸君が、21世紀における理想的な環境システムを創造する技術者・研究者に成長できるよう、引き続き、よろしくご指導のほど、お願い申し上げます。最後になってしまいましたが、皆様のこれからのますますのご健勝とご多幸を祈念いたしまして、私からのお祝いのメッセージとさせていただきます。
本日は本当におめでとうございます。
<平成28年 学位記授与式>"卒業生に贈ることば"
環境創造学科学科長
垣 鍔 直 先生
常に前を向いて 進んでいってもらいたい
学科長を務めております垣鍔と申します。学科を代表して,祝辞を述べさせて頂きます。平成27年度環境創造学科の学部卒業生65名,修士修了生3名,計68名が晴れて卒業及び修了されます。おめでとうございます。4月から企業に入社する方々,公務員になる方々,教員になる方々,また,進学して大学院に進む方々,進路は様々でしょうが,学部を卒業された方はこの4年間で経験したことを活かし,環境のジェネラリストとして,また,修士課程を修了された方々は,環境のスペシャリストとして,頑張ってもらいたいと思います。
まずは,この日の喜びを,ご両親と分かち合って下さい。そして,この4年間或いは6年間の支援に対して感謝して下さい。できることなら,初任給で,ご両親に何かを買ったり,食事をご馳走したり,いわゆる,親孝行して下さい。大変喜ぶと思います。
皆さんの将来に思うことを最初にお話しします。皆さんは色々な思いで入学して,色々な思いで勉強し,そして卒業されますが,我々が共有しているkeywordは「環境」です。ですので,知らない人はいないと思いますが,昨年の12月にCOP21が開催され,歴史的な合意と言われた「パリ協定」を採択しています。京都議定書以来ですので,18年ぶりの温暖化対策のルールとなります。化石燃料に依存しない社会を目指し,条約に加盟する196カ国・地域が参加する初めての国際的な枠組みとなりました。特に,21世紀の終わりまでに温暖化ガスの排出をゼロにするという点は画期的な宣言ですが,実行に移すには様々な問題が山積しており,これからの国際的な協働が重要となるはずです。共に働くという意味ですが,地球の将来は,皆さんの双肩に掛かっていることは間違いのない事実です。活躍を期待しております。
では,どう期待されているかを,もう少し具体的にお話ししたいと思います。マイクロソフトの創始者であるビルゲーツは世界一の金持ちと言われており,その言動は世界中が注目しています。彼は,いまグローバルヘルスに注目しています。グローバルヘルスとは,地球規模で人々の健康に影響を与える課題,またその解決に国際的な連携が必要な課題のことですが,彼は,人類の究極のゴールは途上国の国々が経済的に自立することだと信じています。活動の一環として,昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村先生が開発した抗寄生虫薬の「イベルメクチン」は,熱帯に住む多くの人々を救ったことから,彼が運営する財団はその薬がアフリカ諸国に届くように援助しています。そして,日本がこれから影響力を維持するためには,科学技術・医療・エネルギーなどの分野で優秀な学生を育て,国際的な科学コミュニテーに参加できる若者を育てるべきだと訴えています。そのためには,英語力の向上が課題だとも指摘しています。
英語を勉強して下さいと言いたいわけではありませんが,言葉の障壁をなくす努力は必要だと思います。これまでの10年とこれからの10年では,取り巻く状況が大きく異なると言われています。ご存じの通り,我が国は,人口の減少に伴い,国内の市場は縮小の一途を辿っています。どの企業も目を世界に向けざるを得ないのです。自分は外国とは無関係だとタカを括らないで,常に前を向いて進んでいってもらいたいと思っています。
キャリアアップについて,2つお話したいと思います。まず,1つ目ですが,皆さん,「3年で3割」という言葉を聞いたことがあると思います。先輩達の中で,就職したものの,自分が思っていた仕事と違うという理由で,就職活動で大変な思いをして入社したのに,何の迷いもなく辞めてしまう先輩達がいます。「3年で3割」というのは,入社して3年で3割の人が辞めてしまうことを意味します。どんな仕事でも,5年間以上勤めて,やっと実績を認めてもらえると言われています。3年未満で辞めてしまうと実績は認められませんし,資格を持っていない限り,中途採用される可能性は極端に少なくなります。最近では,転職することは珍しくなくなってきましたが,やはり,ステップアックしていくための転職であるべきです。どうか,そのことを忘れずに,仕事に取り組んでもらいたいと思います。次に,フィナンシャル・タイムズ紙の編集長のジリアン・テット氏という女性の話しをしたいと思います。2000年前後に不良債権問題に苦しむ日本を取材した経験を持っておられる方です。テット氏は「サイロエフェクト」で大企業などの組織で働く人々が,”タコツボ”にはまってしまう問題について指摘しています。特に,生え抜きの幹部の弊害が問題視されています。生え抜きの幹部が権力を掌握すると,過去を踏襲することによって,その権力を維持しようとします。努力せずして,自分の居場所を確保しようとするのです。1つの企業や部門しか知らない人,特定の部門でしか働いたことがない人ばかりが集まっている企業で問題が起きやすいと言われています。その事例の1つとしてソニーが紹介されています。創業者の井深まさるさんや盛田昭夫さんがあまりにも偉大であったため,多くの優秀な人材がサイロイフェクトに陥ってしまったのです。それと,公務員になる方もいるとは思いますが,日本の行政は,万年的なサイロ化になっています。日本が滅びないように,今日の話を忘れずに活躍してもらいたいと思います。
さて,少なくとも5年間は入社した会社で頑張れと言われ,しかも,生え抜きになるなと言われ,どうすればいいのか迷ってしまうかもしれません。どちらにも理由はあり,どう選択するかは皆さん次第です。迷わないように,これから結論を申し上げます。20代にやるべきこと見据えてやり抜く,30代にやるべきことを見据えてやり抜くことです。そのために,自己投資をして下さい。大学院に進んだ人は,まさに自己投資していることになります。そうすることによって,50代,60代で後悔しない人生を送れると思います。
大学は,皆さんにとって通過点ですが,何か困った時は,是非,気軽に立ち寄って下さい。卒業研究の指導してくれた先生がいるうちは来やすいと思います。実は,当学科発足当初からおられる教授の先生方がここ数年で退職されます。どうか,先生方にお礼することをお忘れないように。は,当学科・専攻を卒業或いは修了したことを誇りに思って,大いに社会の役に立って頂きたいと思います。
以上で,祝辞に代えさせて頂きます。
<平成25年 学位記授与式>"卒業生に贈ることば"
環境創造学科学科長
酒 巻 史 郎 先生
自分の足りないことを知り、それを補い向上していく
本日ここに卒業式.・修了式を迎えられた学部卒業生97名、ならびに大学院修了生4名の皆さん、おめでとうございます。学位を授与されるみなさんに、心からお祝い申し上げます。また、卒業生を長い間支えてこられたご家族、保護者、ご関係の皆様にも、心よりお慶びを申し上げるとともに、これまでのご支援に深く感謝申し上げます。また年度末のお忙しいときにも関わらず、本日の授与式にご臨席賜りましたご来賓の環境会会長渡辺様に深く御礼申し上げます。
さて、卒業生・修了生の皆さん。皆さんが4年前あるいは2年前に本学に入学してからこの日を迎えることができたのは皆さんの努力の賜物ですが、同時に皆さんを支えてくれたご両親、ご家族のおかげであることを決して忘れないでください。そのためにも、まずは本日、授与される学位記を持ち帰って、これまで支えてくれたご両親、保護者の方々に早速お見せして感謝の気持ちを表し、卒業・修了の喜びを分かち合ってください。お願いします。
本日の皆さんの多くはこの4月から社会人として新しい道を進まれることになります。その道は往々にして平坦なものではないでしょう。幾度となく壁にぶつかったり、失敗したり、そして不安に陥る時も度々あることでしょう。しかし、社会人としては立ち止まることはゆるされません。くよくよしないで、とにかく、一歩一歩前進していくことが求められるでしょう。では、その前進のためにはどのような心がけが必要とされるでしょうか?やはり、なぜそうなったのかを知る・分析をすることが求められるでしょう。極論すれば、自分を知ることではないでしょうか?自分の足りないところを知り、それを補い・向上していく努力をしましょう。皆さんはまだまだ若いですが人生は有限です。よりよい人生を有意義に送っていくためにも自分を見つめて自己向上に努めてください。また、社会は自分だけで成り立っているわけではありません。自分を知ると同時に相手を知る努力もしてください。そうすれば良好な人間関係を作ることもできるでしょう。
話は変わりますが、皆さんが在学中の2年前に東日本大震災が起こり、地震と津波、そして福島第1原子力発電所の事故により日本の社会は甚大な被害を受けました。そして被災者の方々はまだまだ困難な生活を強いられております。特に人為的な事故による放射能汚染は日本の社会に大きなダメージを与え、環境に対する私たちの考え・取り組みを大きく変えることになりました。みなさんは環境創造学科の卒業生です。社会に出ても、学科のポリシーである、環境の心、すなわち環境に配慮した生活と環境問題を発生させない心構えを持って、悪化した環境の復元・改善とより良い環境の保全とに取り組んで、自然と共生した持続的に発展できる新しい環境社会の創造に努力してください。
最後にこれからの人生を、皆さんが充実して幸せに過ごせることを祈ってます。本日は卒業・修了おめでとうございました。
<平成23・24年 学位記授与式>"卒業生に贈ることば"
環境創造学科学科長
教授 高 橋 政 稔 先生
一歩一歩地道であっていい、信頼される人に
皆様ご卒業おめでとうございます。修士修了生4名、学部卒業生フレックスコース1名、環境総合プログラムコース94名、環境創造プログラムコース9名、合計108名、おめでとうございます。
また本日御多忙の中、授与式にご臨席賜りましたご来賓の理工学部後援会会長村上様、環境会会長渡辺様に深謝申し上げます。 そして、この度3月11日に発生しました東北関東大震災の被災地、被災者の皆様に衷心よりお見舞い申し上げます。
さて、皆様には本日をもって長い学生生活にピリオドを打って、社会の一員として巣立って行かれるわけです。学生時代には多くの学友達と楽しみ、アルバイト、就活と色々な環境の中で共に泣き、笑い親交を深めてこられたことと思います。しかし、そうした中にあっても今日までは、自分のバックボーンに父があり、母がありと、保護者の方々が支えて下さっていました。しかしながら社会の一員として独立していく今、今後は自らを自らが律し、責任も背負って独立独歩の道を歩くこととなります。社会人として常に責任を持ち、他(ひと)に迷惑をかけない社会人として自覚と任務があることを心得て頂きたいと思います。
「衣食足りて礼節を知る」の諺がありますが、満たされた社会の中で日々生きていると古来先人の智慧すら理解出来ない昨今です。宇宙、人類のすべてが解明されたといえども、社会の一員となるということは、多くの人々の協調と和合の上に成り立つものであって、多くの人々の犠牲があり、また自らも人の為の犠牲となり、助け合い、一つの融合体としてコミニュケーション社会の和が成り立つものであると私は信じます。 自分一人が力ずくで他を抑制したり、排斥しても成り立つものではありません。私も60有余年、人生学を学んできた一人ですが平坦ではありません。宝物(ほうぶつ)は他の信頼を得ることであると気付き、今もなかなか完成には至りませんが、遅足であっても時間をかけて努力している道程であります。
この信頼を得るということは誠に時間を要するものあって、少し前進が認められ、活躍できると思うと、それをどこかで破壊する自分の性(さが)が芽をむき出してきます。あせる余りにつくろう自分、作り上げた虚像、見えない裏側の自分、これは三次元の姿かもしれません。積んで、崩して、また積み上げるひたむきな努力と粘りが要求されます。
たとえば、一本の若葉が木となり大木となり、樹となり大樹となるように、心も小心から泰然の心になるように小さな器から大きな器となり、必然と他から求められ、信頼される人物となっていけるのではないかと思惟いたします。 少し歪でも堅実で壊れない信頼感のある人間創造学を私も生涯をかけて構築して参りたいと思い努力しています。また、交互に信頼を作り上げるのに不可欠なのが融和の精神であります。古の昔、聖徳太子が「和を以って尊しとなす」と述べていますが、これが最善の知恵であり、他との交流と信頼関係の基本原理かと思われます。
この度の未曾有の大震災においても多くの被災者の方々は、周りの方々と助け合い励まし合ってゼロからの出発に、他(ひと)を信じ、融和の精神をもとに勇気と希望をもって立ち上がって行かれることと信じます。いま、日本は多難な時を乗り越えなければなりません。君達は、今後の日本を、また世界をいま以上に輝かせていける人材です。一歩一歩地道であってもいい、信頼される人となり、人々と、和もって日本を牽引し、大きく勇気をもって羽ばたいて下さい。君達を信じ期待しています。(平成23年度環境創造学科学位記授与式 学科長挨拶より)
<平成22年・21年 学位記授与式>"卒業生に贈ることば"
環境創造学科学科長
教授 近 藤 明 雅 先生
頼られる存在・人物になっていただきたい
みなさん,おめでとうございます.ご来賓の志賀様,永井様,お忙しいところ授与式にご列席いただきありがとうございました.修士修了生5名,学部卒業生106名が今日の卒業式を迎え,4月に社会に巣立ってゆくわけですが,その前に是非ともやっていただきたいことがあります.みなさん,きょう修了証書・卒業証書を頂くわけでありますが,それをご両親にお見せして,今までに対する感謝の気持ちをきちんと伝えていただきたいと言うことです.これは,ご両親にとって何よりも最高のプレゼントになると思います.
さて,みなさんは,三日三月三年という言葉をご存知でしょうか.これは新入社員が入社してから退職を考えるまでの日数・年月と言われています.まず,3日というのは,希望に胸を膨らませて入社したところ,実際に会社の現状を目の当たりにして,今まで描いていたイメージと違い,会社の選択を間違えたのではないかと思って退職を考える時期と言われています.3月というのは,どの会社でも研修があると思いますが,その研修を終えて実際に配属される頃です.実務がスタートすると,新入社員は,こんな事が自分に出来るのだろうかと心配になったり,自分に自信が持てなくなったりして退職を考える時期と言われています.3年というのは,まわりの先輩社員を見るとおおよそ自分の将来が見えてくる頃です.あるいは,経験を積んでいろいろな仕事が出来るようになってくると,隣の庭がきれいに見えてきます.このようなことから退職を考える時期と言われています.
ここで考えていただきたいことは,このように十分なスキルが身についていない時期に退職・転職すると,一般的には,再就職先の会社は,もとの会社より規模が小さく給料も下がることが多くなります.さらに一度転職を経験すると,何度も転職を繰り返すようになると言われています.すなわち,負のスパイラルに陥り,その先どうなるかは,みなさん想像がつくと思います.一方,十分なスキルを身につけている場合には,会社の方も手放さないでしょうし,待遇も良くなるでしょう.そして,退職・転職する場合には,身につけたスキルを必要とする会社から三顧の礼をもって迎えられることになると思います.
じゃあどうするかと言うことですが,色々心がけて頂きたいことがあります.まず一つはあいさつです.何だあいさつぐらいのことかと思うかも知れませんが,会社の方からは,きちんとあいさつできる人はそんなに多くないという事を聞いております.例えば,大学内で先生方と出会ったとき顔をそらしてすれ違っていませんか.研究室にはいるとき,あるいは退室するとき先生にあいさつしていますか.みなさん思い当たることがあると思います.会社では,上司・先輩・同僚と密接なコミュニケーションをとることが大事になります.そのコミュニケーションのためには,あいさつが第一歩となります.社会人になって気をつけて頂きたいことは,気に入らない人・仲間とも話をすると言うことです.そういう方たちと話をして力を合わせて仕事をすることが非常に重要になってきます.学生時代とは違います.学生時代は,気の合った人とだけ話をしていれば済みますが,社会に出たら,そうではないと言うことを認識して下さい.
2番目ですが,最初に三日三月三年という話をしましたが,別の言い方をすれば,3日我慢をすれば3月続き,3月辛抱すれば3年耐えられる,3年耐えられればさらに続くという経験則のようなものです.キーワードは,辛抱・我慢です.石の上にも3年ということわざがありますが,これも同様の事だと思います.社会に出てからは,この辛抱・我慢なくしては,一人前になれないと心得て下さい.人生山あり谷ありですが,この谷のところで辛抱・我慢が生きてくるわけで,これがないと長続きしません.継続は力なりということばがありますが,これもまさにその通りだと思います.
3番目ですが,社会に出て仕事が与えられれば,とうぜん,好きなことそうじゃないことがあると思いますが,仕事が与えられた以上それをこなさなければいけません.ただ,やらされていると思って仕事をしたのでは良い仕事が出来ないので,興味を持って仕事に当たらなくてはなりません.興味を持てば,工夫が生まれます.創意工夫をこらして仕事を成し遂げると満足感が生まれます.この満足感が次に行う仕事に対して経験として生きてきて,さらにスキルアップする事になると思います.また,成功ばかりではなく失敗することもありますが,その時には落胆します.努力が多いほど,落胆の度合いは大きくなりますが,この失敗の経験は無駄ではなく,その原因を追及し失敗に学ぶことは,物事を成し遂げたときの経験に勝るとも劣らない経験だと思います.いずれにせよ,一つ一つ経験を積み重ねていくことが重要です.
最後になりますが,環境創造学科は,「循環型社会の形成と推進に向け,理想的な環境を創造できる技術者・研究者を育成する.」ことを目標としています.みなさんはこれまで環境に関する基礎を学んできましたが,それを今後も継続してください.会社に入ればいろいろな分野がありますが,それぞれの分野の環境に関する知識を今までの基礎のうえに積み上げて,会社の中で頼られる存在・人物になっていただきたいと思います.以上をもちまして,私のお祝いのことばとさせていただきます.(平成22年度環境創造学科学位記授与式 学科長挨拶より)